Barcarolle



日本建築家協会優秀建築選2005 入選

道路よりの外観

必要な動線を躍動感ある構成で表現

アプローチ

スレート・コンクリート・伊勢砂利

そして、スクリーンの影

隣地保存樹木の銀杏に向かって上る階段

親子世帯を繋ぐ中間領域となる

折り重なる階段

2階 玄関より坪庭まで視線が抜ける

トップライトの光が移り変わり、樹脂塗りの壁を一瞬照らし出す

ペントハウスに上がる階段

3階屋根に水盤の揺らぎ

ダイニングより見上げた空

冬の低い太陽を室内に取り込むため、晴れていれば日中は暖房なしで過ごせる

夏の高い太陽は3階の断熱屋根と遮熱塗料が受け止める

彫刻的存在感を持つ階段

無垢のスチールで構成されている

ダイニングよりリビング

夕景

ダイニングキッチン方向を望む

水盤越しに 都市を望む部屋

ガラスへの映り込みが重層する

夕方

新宿副都心が西日を受けて

赤く光る

<浮遊感>

シェーズロングと夜景

窓際には空調の吹き出しが内蔵されている

また、必要に応じてロールスクリーンが下から引き出せるように配慮されている

夕焼けとペントハウス北側

胎内的包まれ感を持った寝室

東面の丸いガラスブロックから夜が明ける

奥のトップライトは開閉式

竹の植えられた坪庭に面した浴室

露天風呂気分で入浴が可能

ガラスで制作した洗面台
ステンレスでデザインされた
玄関の傘立て

 ※ photo: 坂口 裕康


Barcarolle

最初の打合の後、アトリエに一枚のCDが届けられた。「この音楽が似合う空間を」という意味で送られてきたのはブライアン・イーノのCDであった。

 解体前の旧家屋屋上からは意外な程近くに新宿副都心が望めた、そして、その眺望を最大限に生かすべく3階レベルはガラスの箱とすることが求められた。

 立体路地的な性格を宿した外部階段を共有した二世帯住宅であるが、1階親世帯は出来るだけそれぞれコンパクトに使える独立した居室が求められ、2階世帯は都市に対して開く大きな空間が求められた。3階のペントハウス的に都市に浮いたガラスの箱に対し、それ以外の2層は壁構造のコンクリートによって<守られた>部分として、その上に軽い鉄骨架構をフワッとかけた

 その構成を見ながら頭に浮かんだのはショパンのBarcarolle(舟唄)だった。水上を揺らぐようなリズムに様々な要素が展開するその音楽には、短かったけれども素晴らしい音楽を数多く残したショパンの人生が凝縮されているように感じていた。そして、この住宅は守られたキャビンと浮遊するデッキを持った一艘の船であり、これから此処に住まう家族を乗せて旅に出るのだ、と云うイメージがそれに重なり、この家をBarcarolle(バルカローレ)と名付けた。

 いつも考えるのは、建築が<そこにある>ことによって、実は身近に溢れている地球の素晴らしさを<より感じやすく>することが出来ないだろうかと言うこと。だからクライントには「ここから満月が上ります」(ガラスの箱は2階から空に向けての視線をも提供してくれる)「その月を水盤に映して楽しんでください」「夕方にはこんな光」・・・と設計中から説明をし続けた。一日の動きや季節によって、光がどんなルートをたどってどういう光と陰を空間にもたらすのか・・・それを考えながら設計をしていて、ついぞ工事中に実際見ることが出来なかった光景があった。
しかし、引越が済んでしばらくした頃、奥様がその瞬間のことを話して下さった。

「寝室にいると夜明けの時間帯、丸いガラスブロックに順番に朝日が差していくんですよ」

その寝室にはお引渡し前日に誕生されたお子さんが一緒に寝ている。その子が10歳になればこの建築も10年。
これからどんなアンサンブルを奏でていくのか、ゆっくりと見守っていきたいと思っている。

眺望のために

都市を望むガラスの箱を創るに当たって、最初に考えたのは耐力壁やブレースを使わずにふわりと屋根を浮かして、そこにガラスを嵌め込むという発想だった。様々な可能性を模索しつつ、最終的には3Dデータを構造家の大内氏とやりとりしながら現在の斜め柱で構成する方法に行き着いた。恣意的に<揺らぎ>を考えながら決めた物を、バランス良く水平力を負担出来るよう、メールで修正して貰いながら考えていたのは、<揺らぎ>によって柱であるという既成概念を少しでも溶融する事が出来ないか・・・ということであった。又、空間の抽象性を増幅するために下部は床に埋め込んだH鋼にジョイントし、上部は溝形鋼で挟みこむことによって柱自体にジョイントが見えないよう配慮している。
視覚的に遮断することも出来るよう床下にロールスクリーンを設置。空調はガスエアコンを用いて冷房時は上部ルーバーから、暖房時は床下に吹きだし、ガラス面近くのFRPグレーチングから開放している。厳しい高度斜線から導き出された天井高は、結果として日本間的なスケール感をもたらし、床にぺたんと座ると都市に浮遊する茶室のような感覚を楽しむことが出来る。

(廣部剛司)


建築用途    : 専用住宅(二世帯)
工事期間  : 2001.12-2002.9
主体構造    : 壁式鉄筋コンクリート造+鉄骨造
主要仕上げ材料 : 外部:外壁 /アクリル樹脂プラスター,コンクリート打放
             屋根 /躯体防水+断熱塗料、ガルバリウム断熱屋根
             外構床/スレート、コンクリート鏝押え
          内部:壁  /アクリル樹脂プラスター、樹脂入り砂漆喰
             床  /フローリング
             天井 /リシン吹付
建築面積    :  118.07平米

延床面積    :  231.52平米

施工:岡建工事

構造設計:S.FORM 構造設計事務所


 

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