黒箱-渋谷H



東京都渋谷区の住宅地

変形した難しい旗竿敷地に建つ住宅

道路側は寡黙な表情

地下1階、地上2階

敷地面積:132平米

延床面積:127平米


玄関を入ると路地スペース

スリットからの光が外部を感じさせるが、この扉を使うのは犬の散歩帰りのみである

都心の住宅ゆえに、気持ちを切り替える空間を意図している

第2の玄関を入ると階段室

地窓からは池の揺らぎが入ってくる。行く先の光が期待感を高める

階段室を抜けると一気に2層吹き抜けのサッシュと中庭が目に飛び込んでくる

池越しに中庭

「外で生活したい」と言われたクライアントのために、内外合わせて30畳の生活空間を提案している

見返し

薪ストーブはオリジナルデザイン

中庭より

中庭見上げ

この空を獲得するために

階段室

上部から黄色い光が洩れてくる

2階はプライヴェートなスペース

足元のカーペットもそれを示す

黄色いステンドグラスから柔らかい光

生活の上での公私を繋ぐスペース

書斎1より

階段室廻りと庭が一緒に楽しめる

書斎2

長いテーブルで様々な作業が行われる

モミジと向き合いながら過ごす

背後には就寝スペース

吹き抜け部分見下げ

1階のタイル下には床暖房が施されている

浴室

手前にガラスで製作した洗面器

浴室は坪庭に面していて

露天風呂気分で入浴できる

地下スタジオスペース

趣味のバンド演奏のための空間(防音室)

竣工:2006.3

施工:sobi

構造設計:エスフォルム

※:坂口裕康 撮影


内包された柔らかな生活

それは、「茶畑の家」が竣工する直前のことだった。LVLという木を積層してパネル化した部材で構成した特殊工法のこの家は、素材の特質ゆえに、外部にその構造をそのまま曝すことが出来なかった。そこで、断熱材と一体になった薄い金属の皮膜で覆ったのだが、その時、剥き出しのLVLで構成された空間は突如として守られた柔らかい領域へと変化を遂げた。

渋谷区の住宅街に位置するこの「黒箱-渋谷H」の空間を性格づける出来事は、この時すでに起こっていたのだと思う。厳しい敷地の南側に大らかな中庭を取ることによって、占有された外部空間を内部と連続的に使うという方針は、初めて敷地を訪れたときから私の中では一貫している。しかし、そのあと数多くのデザイン上キーとなるポイントの判断は、黒い皮膜の中に如何に<柔らかな空間を内包するか>その1点に収束していくことになった。それゆえ、木造の架構は意図して美しいと感じる部分を露出させ、内部の生活を見守る建築の各部分も、内部で行われるであろう生活を想像しながら、それが自然に馴染むよう一つ一つ決められていった。その部分のバランスこそが、時間をかけてデザインした最大の部分であるといってもいい。

 住宅地であるとはいっても、都心。テンションの高い街から生活空間へ如何にして気持ちを切り替えるか、それもこの家で特に気に掛けたことである。収納スペースを確保することと、犬を迎え入れることが前提としてあったので、その為の「路地」を玄関から中庭に向けてつくった。しかし、そこから中庭に直接出るのは、犬の散歩帰りだけである。
引き戸を開けて第二の玄関を入ると、上からステンドグラス越しに洩れる黄色く柔らかな光。そして、低めに設けた地窓からは池の揺らぎが仄かに中庭の存在を示唆する。その突き当たりを抜けた先に、突如として2層吹き抜けの大きなガラス面と中庭が目に飛び込んでくる。この距離感を生活と両立させながら生み出すこと、そして、その黄色い光の階段室空間で、上下階の公私感を隔て、繋げること。それらすべてが、「私達は外で生活がしたいのです」と言われたクライアントの生活空間を支えている。

廣部剛司


Back

e-mail

(c)Takeshi Hirobe

データの無断転載を禁じます