茶畑の家

茶畑に面した敷地の特性を最大限に生かすべく
日本初工法である壁式木質厚板構造(WTP)に挑戦した住宅

1階はガレージになっており、2台のアルファロメオが納まる

壁・スラブとも100mmのLVLパネルにて構成され、
フトコロのない内部空間と、前面に拡がる茶畑側に幅6mの大きな開口部を獲得しています。
 内部はほぼLVL素地、しかし、柔らかさと静けさを
 感じられる空間を目指して設計を進めました。

 工場検査の様子(鹿児島)

 2層分のパネルを一気に建て込む


特殊な木構造を黒い金属皮膜で覆っている

折れ戸部分はガレージの入り口

将来増築用に2階の窓は掃き出しとしている

玄関にはいると、spiderが迎えてくれる

階段は持ち出し構造

階段の見上げ

テンション材が床を吊っている

浴室空間

桧板が張られている

正方形の窓から茶畑

2階 LD

就寝スペースより見下ろし

全開口サッシュを開放した状態

内部空間が茶畑側に延長される

敷地面積: 198.38m2  (60坪)
建築面積: 60.9m2 
延床面積: 114.8m2 (34.8坪) 
 
主要用途: 専用住宅
建物高さ: GL+5.9 m
階  数: 地上 2 階
構  造: WTP 壁式木質厚板構造

施工:シグマ建設

構造設計:S.FORM 構造設計事務所

※ photo: 坂口裕康

(2004.10 竣工)


聴いてみたかった響きは


計画敷地は、幹線道路から少し入った立地にもかかわらず、シジュウカラなど鳥の声が驚くほどよく聞こえる静かな環境で、最大の特徴は狭山茶の畑に面しているという点である。車が趣味のクライアントのため、2台のインナーガレージと水廻りを1階に配置。2階は基本的にワンルームの居住空間としているが就寝スペースを500mmスキップすることによりプライバシー上の序列を獲得すると同時に生じたスリットから愛車を眺めて過ごすことが可能となっている。

茶畑側に面して大きな開口部が欲しいこと、ガレージ部分の大きさ、コストバランスなどを考慮していくうちに構造家大内氏の研究していたWTPが上手くフィットするのではないかと考え、某メーカーの研究者であるクライアントの理解もあり採用に踏み切った。プランニングはあくまでも使い勝手や美的観点から進めていったため、計画の当初から新工法に対して技術的に解決すべき部分が多々あったが、構造家とキャッチボールを繰り返しながらデザインに昇華していくプロセスを経て<用の美>とでも言える空間に少しでも近づくようつとめた。
茶畑側には幅6m高さ2.65mの大開口を設け、全面開放を可能とすることで内外の連続性を目指し、それ以外の面は太陽の動きや近隣環境を配慮して開いている。また、茶畑と反対側はいずれ増築が予定されているため掃出し窓としている。

LVLで構成される空間で聴いてみたかった響きがあった。スライスされた木材が積層されて作られるLVLは量感として無垢の木材に近い。反面、ともすればスケルトンでノイジーになりがちな素材にまず<静けさ>を与えるために壁・天井のパネル目地を合わせ(この作業は相决り加工されているパネルの目地ずれを考慮する必要があった)、構造体に関するものと二次的な要素をはっきりと分け、サッシュ廻りも可能な限りLVLの断面を意識させるディテールに統一した。

響きの隠喩として意識したのはLVLの表面に現れる木目である。ハリモノでは無いため、積層された木材のある一枚が<偶然に>現れる。チャンスオペレーションが生み出す現代音楽の図像符のようなパネル面が、時間帯によって窓、トップライトなどから照らされ経時変化によるバリエーション(変奏)を続ける。その上に実際の音環境として、鳥の声やクライアントが愛聴するイタリアオペラのアリアが、茶畑の向こうに沈む夕陽と共に生み出す、そんな空間の<響き>である。

廣部剛司


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